最初の嘘、最後の嘘
愛しい人のためについた最初で最後の嘘
これは私が私のためについた嘘であり
貴方をを傷つけ、私を嫌いになってもらうためについた哀しい嘘
「大嫌いだよ、政宗」
政宗はどこかのお姫さんと結ばれる。
伊達の領地を広げるための婚礼だと聞いた。
それは当たり前のことで、いつかこうなるのもわかっていた。
それでいい、政宗がそうしてくれれば早く戦が終わる。誰もが望んでいる天下泰平の世が近づく。
今となっては政宗と俺が恋仲だったという事の方が信じられない。
お前は伊達家の頭首様、俺は織田に仕える前田の女。
魔王と竜が分かり合うことなど無いと知っていたのに・・・俺達は引かれあってしまった。
引かれあってしまったから、この恋の終わりは最初から見えていたんだ。
政宗が少しでも俺を嫌いになってくれるように大嫌いと告げて逃げてきた。
もう、お前が好きといってくれた「前田慶次」はいないと解って貰うために。
俺に未練を残して婚礼を台無しにしない様に。
だから・・・これでいいんだよ
「ッは・・・はぁ・・・はぁ・・・」
政宗に別れを告げた俺は、何処に行くわけでもなくがむしゃらに走り続けていた。
少しでも早く、政宗の傍から離れるために。
気が付けば、山奥に一本だけ咲いている大きな桜の木の下に来ていた
ここは・・・俺と政宗の思い出の場所だった。
“慶次”
“んー?”
“I love you”
“へっ?ご、ごめん、分かんない”
“愛してるつったんだよ”
“そ、それは・・・政宗が、俺を・・・好き、ってことでいいの、か?”
“それ以外に何があるって言うんだ?”
“いや、その・・・あの”
“俺じゃ不満か?”
“そんなわけ無いだろ!うっ、嬉しいんだよ・・・っ!”
この恋が終わるのは、最初から分かっていた。
あの日の告白が嘘ではないのも分かっている
こうなることは最初から覚悟していた。
それなのに・・・それなのに
「っあ・・・っく、ひっく・・・えっ・・・ひっ・・・っく」
こんなにも、胸が苦しくて
こんなにも、壊れてしまいそうなのは何故だろう?
「っく・・・ひっく・・・うああっあああ!!」
俺は桜の木の下で大声で泣いた。
情けないけど、自分でついた嘘に泣いていた。
もう、涙を流している俺を優しく抱きしめてくれる政宗はいない。
俺が政宗を傷つけ、俺が政宗のためについた嘘なのだから。
「めんな、さ・・・ごめんなさ・・・ごめんなさぃ・・・!・・・ぁあああ・・・っ!」
俺は何に謝っているか分からなかった。
謝っているものがあるとすれば、政宗を嫌いと嘘をついたことだろう。
なぁ、政宗。
最後にもう一つ、もう一つ嘘をつかせて?
「・・・だい、きらいなんて・・・そなん・・・うそ、だよ・・・っ・・・大好きなんっ、だよぉ・・・!まさむねぇ・・・!」
いつかまた、別の世で貴方とめぐり合えるなら
どうか、どうか・・・最初についた私の嘘を忘れていてください
いつかまた、別の世で貴方とめぐり合えるなら
どうか、どうか・・・最後についた私の嘘を伝えさせてください
私が誰よりも愛した貴方へ
幸せな恋をさせてくれた・・・大好きな貴方へ
作者コメント
・・・・・・ごめんなさい
いやー、二人の立場上こんなSSもありかなーと思いながら書きました;
あ゛〜、今年は「文才」という名のクリスマスプレゼントくれませんかサンタさんっ!(切実)
実は言うとこのSSは某サイトさんのエイプリルフールSSを読んで勝手に自分で続かせて頂いたものだったりします・・・
後ほど謝罪させていただきます某様っ!!!(最初に謝っとけよ)
と言うか政慶なのに政宗出てませんね!ごめんなさい!